[考察]FESTOの何が凄いのか?華麗なる蜘蛛、蜻蛉、蝙蝠、蟻、胡蝶、水母ロボット(そしてカンブリア期の生物ロボットも)

ロボティア編集部2021年12月21日(火曜日) festo

生物ロボットで追求する究極の機能美

FESTOはドイツに本社を置くFA機器メーカーだ。主力の空圧機器やサーボシステムでは世界トップシェアクラスを誇り、製造業では誰もが知る優良企業である。

FA機器という本業以上にFESTOを有名にしたのが、同社が開発する一連のバイオテックロボット(生物ロボット)シリーズ。多くのメディアで取り上げられるのでご存知の方も多いだろうが、トンボ、アリ、クモ、コウモリ、チョウチョウ、クラゲ、エイ、カンガルーと幾種もの生物ロボットが開発され、そのリアルな動きで多くの世の中を魅了している。動画で見る限り、コウモリやチョウチョウの動きは、本物と見間違うほどである。

FA機器メーカーがなぜ生物ロボットをつくるのだろうか。なんら実用性があるわけではない。対外的に販売して儲けるわけでもない。ただただ生物の動きを追求しているだけである。昆虫ロボットに囲まれ、嬉々としてコントローラを操作するドイツ人技術者たちの表情を見ていると、小言の一つも言いたくなる(遊んでないで仕事しなさい!)。彼らはいったい何を考えて生物ロボットを作り続けているのだろうか。

ここにはFESTOの大きなこだわりがある。FESTO側のコメントによると「テクノロジーの本質は人間の頭から考え出されるのではなく、自然界に自然と存在しているもの。それはシンプルな機能ゆえの美しさ、美しさゆえの機能を備えており、人間にできることはそこに敬意を払い、ひたすら追求して触発を受けるぐらいのこと」だという。販売してしまっては目的がずれてしまうのだ。販売はしないが、来て見て触ってもらうことは歓迎(触発をお裾分けしたい)ということらしい。

あのシンプルな機構と制御、それゆえの動きの美しさはこの信念から来ている。

最近ではFESTOは遂にカンブリア紀の生物のロボット化にまで手を出している。4億8540万年前の原始生物は今よりもっとシンプルな機能とフォルムで、より自然界の追及に適していたと考えたのだろう。

そう言われるとあの時代の不思議な生態の生物たちが美しく見えてくる。これまでのFESTOロボットもフォルムがグロテスクな生物が多かった。特に漢字にするとおどろおどろしい生物ばかりだ。蜻蛉、蟻、蜘蛛、蝙蝠、蝶々・・・。逆にグロテスクさやおどろおどろしさがないものは、FESTOの美学をあまり活かすことができないのかもしれない。FESTOは犬や猫のロボットは作らない。FESTOが作ったものの中でも、袋鼠(カンガルー)ロボットは動画を見てもあまり美しくなく、おもしろくもない。

このように考えてくると、グロテスクさ、おどろおどろしさの本質は、実は「究極の機能美」にあるといえないだろうか。