リニアからアルゴリズムの世界へ...グレイオレンジがしかける倉庫業務の変革

ロボティア編集部2019年1月23日(水曜日)

-アドバニ氏は日本にも生活のベースがあり、業界の実情にもお詳しいとお聞きしています。日本のリテールや流通業に関しては、どのように分析されていますか?

「まず日本のすごいところは、約1億3千万人の人口という市場スケールがある点です。関東だけでも2~3千万の人口があり、端から端まで2時間あれば行けるくらいに交通インフラが整備されています。大げさな表現をするならば、オンラインでアイスクリームを注文して、溶ける前に届く世の中なんです。eBayが日本をほっておかない理由も、それら人口のスケールやインフラ状況にあるのでしょう。一方で、バックエンドである倉庫などに人手が集まらないという大きな問題もあります。人件費の問題でもなくて、そもそも倉庫で働きたいと考えている人の数が少ない。大変で面倒だというイメージがありますし、シーズナリティもある。オーストラリアなどのように、高い報酬を払うから夜働いてくださいと言っても、人が集まらないという状況があります。弊社では、その倉庫業務のイメージの変革に寄与できると考えています」

-気になるのは、バトラーシステムなどグレイオレンジ社の倉庫用ロボットシステムを導入するとして、どのくらいの規模の倉庫から費用対効果がしっかりと発生するのでしょうか。従来の産業用ロボットなど自動化設備は、大規模な企業しかコスト的に導入できないという欠点があったかと思いますが、いかがでしょう。

「計算上、現時点で30人いないと業務に滞りがある規模の倉庫であれば、弊社のシステムを使うメリットがあると思います。正確には、30人以上ですね。多ければ多いほど、システムの価値が高まります。本来、30人いないと作業がまわらない倉庫で弊社のシステムを導入いただければ、人間のスタッフは10人で済むと想定しています。経営の立場に立った時には、30人より10人の方が集めやすいですよね。その20人分の人件費で弊社システム導入したとすれば、数年後にはペイできるでしょう。正直、それ以下の人数の倉庫であればペイするまでの期間が長くなってしまいます。ですので、20人分相当より多い仕事を機械で埋めた際には、コスト的な採算メリットも実感いただけるかと」

-日本の読者にメッセージをお願いします。

「日本は効率化や最適化が世界トップクラスの国で、私自身もその築き上げられた伝統や歴史をリスペクトしています。ただ、それ故に既存のやり方ではこれ以上の最適化は難しいとも感じています。数年前から、アマゾンなどEC企業と配送企業の軋轢が表面化している問題などがその象徴かもしれません。今後はAIやロボットを、それもリニアではなくアルゴリズムの世界を積極的に取り入れて、次のステップに進んで欲しいと考えています。世界的な視野で見れば、リニアで止まっている限り逆に取り残されてしまう可能性も否定できません。グレイオレンジは、新しい時代に適した倉庫業務の変革や、アルゴリズムの世界への進出を支援させていただきたいと思います」

-リニアからアルゴリズムへ。AIやロボットの活躍が増える中、倉庫業だけでなく、社会全般でも求められる価値観の転換期だという印象も受けました。本日は、興味深いお話をお聞かせいただきありがとうございました。

(取材/文 河鐘基・河原良治)