リニアからアルゴリズムの世界へ...グレイオレンジがしかける倉庫業務の変革

ロボティア編集部2019年1月23日(水曜日)

-そこで、AIやロボットを使ったバックエンドの自動化が必須だと

「はい。それに作業の間にデータをしっかり取って利活用する必要もある。ほんの一例を挙げるのならば、データさえ取れれば、多くのSKUを発生させる顧客との付き合い方も変えることが出来ます。茶色と黒色はないことにしたり、あまり商品数を見せないとか(笑)そこまでやるかは別として、データには何らかの価値が絶対にありますので、リテールのバックエンドを自動化することのメリットは途方もなく大きいのです」

-オフラインのビジネスは家賃や人件費、在庫などを抱えるので、オンラインの方が楽で儲かるみたいなイメージがありますが…。世の中の動きを考えると、その認識はミスリードなのかもしれないですね。

「海外の事例ですが、例えば、中国の『独身の日』には大量の注文が発生します。中国の大手物流サービス企業・菜鳥(CaiNiao)の巨大倉庫からは、普段1日5000万SKUが出荷されますが、独身の日にはその数が6億5000万SKUになる。約13倍です。そして、3割にあたる約2億SKUが倉庫に戻ってきます。それら走行では、返品されたものを検品したり、棚に並べたり、きれいにして包装しなければならない作業が発生する場合もあるでしょう。オンラインリテールは、競争率がすごく高い上に、そのようにバックエンドのコストが想像以上にかかります。しかし、コストを削減する手法はあまり確立されていません」

-御社のロードマップとも関連してくると思うのですが、アドバニ氏ご自身は「未来の倉庫業の在り方」をどのように見通されていますか?

「我々としては『人が苦労する倉庫』ではなく、『人が楽しく働ける倉庫』を生み出していきたいと考えています。バトラーで説明するならば、ロボットがモノを仕分けして運んでくれるので、人間のスタッフは特定のエリアにいながら作業を行うことができます。そのエリアにだけ冷暖房をかけることだけひとつとっても、働いている人の苦労を減らすことができます。他にも『倉庫業務は嫌だな』ではなくて、『悪くないじゃん』という環境を用意できるようにしていきたい。そして、人間のスタッフにはロボットにはできない価値がある作業に集中してもらいたいと考えています」

-自動化というと、ロボットが人間を代替するイメージですが、グレイオレンジでは「人間とロボットが協業する倉庫」を目指しているようにも聞こえます。

「そうですね。わたしどもが目指すインテリジェント・ウェアハウス(知能化された倉庫)は、ファクトリーオートメーションとはコンセプトがまったく異なります。ファクトリーオートメーションは、素晴らしい品質の製品を機械で量産すること、すなわち同じことの繰り返しを機械に正確に行うせることが目標です。先ほどの話じゃないですが、リニアな自動化ですよね。しかし、倉庫はリニアでは対応できません。SKUの数が数個で済むのならリニアでもいいのですが、ECはそういう訳にはいきませんので。例えば、弊社のシステムではピックパルというピッキングロボットがSKUを認識して、自分でピッキングできると判断すれば商品を取ります。しかし、SKUが重かったり割れやすかったり、また向きが悪かったりなど、取れないと判断すれば人間に作業をまかせます。人間が得意なことはぜひ人間にやってもらいたい、人間がやらなくても済むことは機械がやると。そういう、人間と機械の協業の効率性を最大限に高めたインテリジェント・ウェアハウスを実現するのが我々の目標です」