一方、インド国民の医療保険の普及率は大変低く(15%以下)、これが医療サービスを受ける上での制約要因になっている。国家健康保険計画(Rashtriya Swasthya Bima Yojana)など医療保険の拡充に向けた政府の取組みと、保険産業の事業環境を改善する規制緩和などにより、2020年度には医療保険の加入率が20%にまで上昇すると見込まれている。このように医療サービスを国民に身近に提供していくことで自然と医療機器への需要も高まっていくことになる。
さらには先述した通り、インドでは生活習慣病が増加の傾向にある。その実態は、既に世界で最も多くの糖尿病患者を抱える国だという報告もあるほど。 今後、生活習慣病の予防や治療には、様々な医療機器が投入される予定であり、需要も高まっていくと考えられる。
インドでは国が医療産業を後押しする一方、さまざまな課題も懸念されている。 第一に医療機器の高額な設置料金および利用料金である。インドで使用されている医療機器の大半は輸入製品だ。特に高性能の機器に関しては輸入品に過度に依存しており、地元メーカーの大半は、低価格の使い捨ておよび消耗品の製造に特化している。したがって、輸入製品が圧倒的に多いことから、インド国内の医療機器産業の雇用の大半は開発技術者ではなく、販売関連が多くを占めている。メンテナンス料や維持費を考えると、政府の投資だけで賄っていける規模ではない。また、高額な利用料金によって農村地域や低所得者の大半は、政府の補助でもない限り、医療機器による診断は受けられない状況になる。
第二に、専門能力を持った人材不足である。インド国内にはまだ高度な医療機器技術を教えていく態勢は整っておらず、こちらも一朝一夕には成し得ないため、大いに懸念されている。
