カナダで「先端自動車製造計画」…フォードが840億円超を投資

ロボティア編集部2017年4月5日(水曜日)

 3月30日、オンタリオ州キャスリーン・ウィン首相は、同州南部ウィンザーを訪問。カナダのジャスティン・トルドー首相出席のもと、フォード・カナダ社が10億カナダドル(約840億円)超の新規投資を行うことに対して、州政府と連邦政府がそれぞれ最大約1億240万カナダドル(約86億円)の助成を行うと発表した。

 今回の投資によって、現在の数百人の雇用に加え、新たに300人の熟練技能者の雇用が見込まれている。フォード・カナダ社は、ウィンザーのエンジン工場で「先端自動車製造計画」を推し進め、世界トップクラスのパワートレイン製造施設にすることを目指す。

 また同社は、「オタワ研究・工学センター」を新設し、次世代のコネクテッドカー関連技術の研究開発を行う。具体的には、インフォテインメント(車載機器向け情報通信)、車載モデム、ゲートウェイ・モジュール、運転者支援機能および自動運転車などにフォーカスした研究開発が予定されてる。

 これらイノベーション推進のための投資は、代替燃料のような環境に配慮した「グリーン・イニシアティブ」を含む、いくつかの重要な分野において、フォード社の研究開発活動をさらに促進するものと予想される。

 オンタリオ州の自動車生産台数は北米第一位で、クライスラー、フォード、GM、ホンダ、トヨタなど、世界の一流自動車メーカー5社が拠点を置く。米ミシガン州デトロイト市とオンタリオ州ウィンザー市を結ぶ約420キロの「コリドー(自動車回廊)」には、マグナ、リナマー、ウッドブリッジ・グループなどの地元の最大手を含む700社を超える活力にあふれた部品メーカーが集中しており、500社を超える工作機械、ダイス、金型メーカーも点在している。

 また、海外サプライヤーによる同州への新規進出も継続して行われており、主な進出企業にネマック(Nemak)、豊田鉄工、ブローゼ(Brose)やHBPOが挙げられる。同州の自動車産業には10万人の高技能人材が就労しており、2015年の生産台数は226万台だった。過去5年間で見た時も、オンタリオ州は北米のどの州よりも多くの自動車を生産してきた。その生産台数は、北米大陸での全自動車生産台数の15%を占める。現在、自動車および自動車部品生産では、オンタリオ州で10万人以上を直接雇用し、さらにそこから派生する数十万の関連雇用をサポートしている。

 またオンタリオ州は、自動走行車の一般道路上でのテストをカナダで初めて許可した州でもある。これまでも、自動車産業の将来を決定づける先端的技術の開発と実用化を推進してきた。

 ウィン首相は、「自動車産業はオンタリオ州の経済を推進し、多くの雇用を提供します。イノベーションを支援し、オンタリオ州の自動車産業の将来にわたる成功を確実なものとするために、フォード・カナダ社およびカナダ政府が連携できることを喜ばしく思います」と所見を述べた。

 一方、オンタリオ州のブラッド・デュグイッド経済開発・成長省大臣は、「技術とイノベーションは、常に進化し続けており、オンタリオ州の自動車産業が、世界で競争力を維持するために前進し続けることは極めて重要。研究開発に専念するフォード社は、この部門における中核の一つであります。オンタリオ州政府およびカナダ連邦政府との連携により、フォード社はここオンタリオ州において明日の自動車を製造するグローバルリーダーとしてあり続けることと期待しています」と、コメントを寄せた。

■オンタリオ州について

 オンタリオ州はカナダ経済の中心地とで、カナダ全GDPの37%、人口39%、輸出品の38%がオンタリオ州に集中する。北米においては、国際貿易と投資の中心となって久しい。世界の主要企業はこれまでに、オンタリオ州で事業を設立または、拡大してきた。分野としては、自動車、航空宇宙産業、ライフサイエンス、バイオテック、金融、鉱業など多岐にわたる。日系企業も約200社がオンタリオ州に投資し。ホンダ、トヨタ、日産、三菱重工業、カプコン、コーエイ、アステラス製薬、武田薬品工業、キヤノン、住友精密などの主要企業が現地法人を構えている。