チョムスキーvs.レイコフ…言語学が握るAIロボットと人間の共存

ロボティア編集部2016年11月24日(木曜日)

 生身の人間と同じように感情を持ち、人々と触れ合いながら会話のバリエーションを覚えていくソフトバンクのPepper。開発当初は米経済紙「ブルームバーグ」において「日本初の感情ロボット」として高く評価され、世界中の注目の的となっていたわけであるが、先日同誌の記事において「面白いが実用的でない」と酷評された。その理由や背景として、同社が買収したロボット開発企業「アルデバラン・ロボティクス」との意思疎通が上手くいかなかったこと、技術面においてロボット工学やAIに疎いメンバーがプロジェクトを先導していたことなどを挙げている。

 Pepperのような人間らしい振る舞いをする人工知能ロボットを開発するにあたり、言語学的アプローチが新たな発見へと通ずると考えるのは、米デラウェア大学の機械工学者、ハーバート・タナー(Herbert Tanner)博士だ。人間の新生児は自分の身の回りにいる人間の言葉を即座に聞き入れながら会話能力を上達させていく。このようなプロセスは人間のみならず、ロボットも経験するものだというのがタナー博士の見解である。現在、同大学の言語学者らによる協力を得ながら、形式言語理論に基づくアルゴリズムが組み込まれた“自ら思考するロボット”を開発中である。

 そのロボットには高周波無線機器と8体のカメラが搭載されている。現在地や目的地を三角法で測定し、指定された場所へモノを運ぶことができるようだ。

「我々が開発しようとしているのは、指示を出している人間や周囲の環境を観察することによってこれから自分が行動すべきことを考え、実行へと移すことのできるロボットです」(ハーバート・タナー)

そのロボットを支える形式言語理論とは、ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)に代表される言語理論である。近代哲学の祖として知られるフランスの哲学者ルネ・デカルトの心身二元論、つまり「心(精神)」と「身体」は各々独立した存在物であるとする考え方に端を発する。