インドに押し寄せるロボット化の波。その"浸食"は先進国さながら

ロボティア編集部2015年8月15日(土曜日)

moditelegraph
photo by niticentral

アジアを中心にロボット化の波が押し寄せようとしている。その影響を強く受けているのが中国とインドだ。中国については数々の報道がなされているが、欧米主要メディアはインドの変化にも注目しているようだ。ブルームバーグビジネスは、インドのロボット化について詳細に報じている。

産業用ロボットの導入により、人間の仕事が減るという状況が世界各地で起きようとしている。廉価な労働力を抱えるインドも、その“浸食”は先進国並みだと言われている。ロイヤル・エンフィールド・モーターサイクルのインド南部の工場では、巨大なロボットアームが作業を行っている。塗装やコーティングを行うその“腕”は、一日中、それも人間の手足の倍の速度で作業し、ミスをすることが決してない。

第二次世界大戦中に、イギリス軍に使用されたロイヤル・エンフィールド社のオートバイは、カルト的な魅力で愛好家たちを魅了してやまない。年間を通じて、購入者の列が途切れることはなく、欧米のセレブであるブラッド・ピットやビリー・ジョエルが所有していることでも有名だ。オラガダム工場では、塗装ラインを管理するためにほんの数人の労働者だけが必要とされている。彼らの仕事は、その需要が多いクラシック二輪車のデザインを仕上げることだ。人間15人が3シフト制で苦労して行う作業を、4台のロボットはいとも簡単にこなす。

ロボットの投入と自動化は、かつて活気のなかったインドの工場に刺激を与えている。業務を効率的にこなし、その生産性を高めているの。従来であれば、生産性の向上は経済成長にとってプラス。だが、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相にとって、ロボット時代のトレンドが頭痛の種となっている。というのも、ロボットが非熟練労働者の役割を減らしてしまうため、首相が掲げている貧民層の雇用創出キャンペーンと、真っ向から対立するからだ。インド教育を受けられなった労働者たちは、ロボットが参入してきた際に、より複雑なタスクをこなす準備ができていない。そのような間に、中国などロボットを迅速に導入している国家は、日に日に競争力を高めている。

「非熟練労働者のニーズが低下しはじめている」

ムンバイの機関投資研究専門家で、インドの人口統計に関する本の著者であるAkhilesh Tilotia氏は、そう指摘する。

「どんなに教育に力を入れても、またどのような開発スキルを捻りだしたとしても、5~10年の間に発展する産業に追いつくことができるでしょうか?その連鎖や結合、サイクルが、インドでは壊れています」