【PR】ニチレキとGRIDがAI を活用した 床版上面の損傷箇所判定システムを開発

ロボティア編集部2020年7月20日(月曜日)

ニチレキ株式会社(本社:東京都千代⽥区、代表取締役社⻑:⼩幡学、以下「ニチレキ」)と株式会社グリッド(本社:東京都港区、代表取締役:曽我部完、以下「グリッド」)は、AI と電磁波を組み合わせた技術により非破壊で橋梁の鉄筋コンクリート床版上面の損傷箇所を判定するシステム「smart 床版キャッチャー」の開発に成功いたしました。また、国土交通省が取りまとめた「点検支援技術性能カタログ(案)」※1)に本システムが掲載されたことをお知らせいたします。

近年、高度経済成⻑期に集中的に整備されたインフラが耐用年数を迎え、老朽化することが喫緊の課題となっております。なかでも橋梁は全国に約 72 万橋近くあり、10 年後には、建設から 50 年以上を経過する橋梁が半数以上を占めることとなり、今後、維持管理費・更新費が増大することが見込まれます。老朽化による損傷が急速に増大する将来においては、インフラを定期的に点検・診断し、致命的欠陥が発現する前に対策を講じることで、事故や災害を未然に防ぐとともに、インフラの⻑寿命化により、⻑期的に見た場合のライフサイクルコストの縮減を図る「予防保全」の考えに立った維持管理が必要となります。

従来、橋梁のコンクリート床版上面の点検は、舗装の撤去復旧が必要となり非常に困難でした。ニチレキは、「予防保全」を実現するために電磁波レーダを搭載した測定車「床版キャッチャー※2)」を平成 26 年に開発し、一般車両の交通の流れの中で走行しながら測定を行い、非破壊で床版上面の状態を判定するシステムを確立しました。しかし、電磁波の反射信号による判定は熟練技術者の判断で行われていたため、判定に⻑時間を要することによる高い調査コストや判定技術の継承などの課題がありました。

これらを解決するため、日本有数のテクノロジーベンチャー企業であり、社会インフラ業界を中心とした AI開発プロジェクトを多数手掛けてきたグリッドの AI 技術とニチレキの道路舗装材料に関する製造・工法・施工および高度なコンサルティング技術を用いて本システム「smart 床版キャッチャー」を開発いたしました。

本システム(図-1)は、電磁波の反射信号に熟練技術者が判定した結果を付与した教師データを基に開発したAI により、損傷を判定します。従来は解析、報告作業は事務所にて行っておりましたが、導入後は、計測後に損傷範囲の判定結果がクラウドに解析速報として即時アップロードされ、調査から解析まで現場で完結させることができるため、道路管理者は迅速に安定した判定結果を確認することが可能となります。

また、「smart 床版キャッチャー」に高精度位置情報(RTK-GNSS)を採用したことで、計測座標を基にした AI 判定前後の作業において、これまで熟練技術者により行われていた両車線の座標合わせ作業を自動化しました。以上により、作業工数を削減して定期点検の効率化を図ることで、従来の熟練技術者による方法と比較し、調査費用を約 2 割のコストダウン(ニチレキ社比)に成功しました。

なお、本システムには、実際の損傷などから得られる新たな知見を反映できる「AI 再学習機能」を取り入れております。これは、熟練技術者が AI 技術者の手を借りることなく AI 再学習を可能にする機能です。この機能により新たに蓄積したデータを AI が再学習することで、判定の精度を向上させることが可能となり、調査による予防保全の支援を強化し、橋梁の予防保全に大きく貢献できると考えております。

※1)技術番号 BR020010-V0020 「点検支援技術性能カタログ(案)」内「第 2 章 性能カタログ ■非破壊検査技術(橋梁) 2-260」(国土交通省資料)

※2)床版キャッチャーは、搭載した電磁波レーダから、一般交通の中で走行しながら路面に電磁波を発信し、路面下の電気的特性の分布に起因する電磁波の反射信号を受信して、その特徴に基づき RC 床版上面の状態を非破壊で判定する測定車両です。