AI技術を利用した中国の医療プラットフォーム「平安グッドドクター」とは

ロボティア編集部2019年1月9日(水曜日)

「アイメッド」(ネクシィーズが運営)や、三菱商事などが支援する「curon」など、平安GDのようなアプリも日本でも誕生しているが、健康保険を適用したオンライン診断は事実上、行っていない。制約がまだまだ多く、またスマホを満足に扱えない高齢者が少なくない状況で、普及するには相当な時間がかかりそうだ。

世界一と言われる公的医療保険制度を持ち、業界団体や厚労省が頑なに規制緩和を阻んでいる我が国に進出するメリットは今のところ平安GDにほとんどないと言っていいだろう。ただ日本は高齢者を多く抱えた過疎地域との医療格差解決がすでに喫緊の課題となっており、経産省や厚労省、大学病院は平安GDなどの医療プラットフォームについてかなり詳細な調査を初めている。診療報酬を改訂したのも、本格的なオンライン・遠隔診療の布告でもある。

こうして見た場合、例えばオンラインでの問診から処方箋の発行まで健康保険を適用して行える特区を作り、ソフトバンクと平安GDがタッグを組む形で試験的にサービスを開始する可能性は少なくないのではなかろうか。また、平安GDでユーザーの利用が最も多いのは小児科と婦人科(産婦人科含む)、皮膚科なのだが、後者2つは日本では自費診療の割合が高い。東南アジア進出で、自費診療分野でのプラットフォームの提供ノウハウが蓄積されれば、診療カテゴリーを限定して日本でのサービスを始める可能性もある。美容外科のオンラインカウンセリングなどは始めやすい領域かもしれない。

さて、世界に類を見ないサービスを提供する平安GDだが、指摘してきたように親会社である平安保険のグループ戦略の一部分として見るとさらにそのスケールには驚かされる。平安保険グループ全体の時価総額は保険会社として世界最大の21兆円規模で、保険・金融商品の利用者とITサービスの利用者の合計は中国で4億人にのぼる。

保険、金融、投資、不動産という生活に密着したサービスを相次いでリリースする中、平安GDという医療・健康サービスを加えることで、巨大なエコシステムを構築しようとしているのだ。

※本記事はBeautyTech.jp掲載の『平安グッドドクターはアプリで医療の未来を先取り、タイを足がかりに東南アジアへ』を改題・再編集したものです。