シャシュア教授はモービルアイを設立する4年前となる1995年に、「CogniTens」という企業を創業した。部品・完成品の精度を測定する3次元光学測定システムを開発する会社だ。なおCogniTensは、2006年にスウェーデン企業「Hexagon」に売却された。またシャシュア教授は、モービルアイに注力していた2010年にも、「OrCam」という会社も立ち上げている。同社は人工知能およびコンピュータビジョン技術を活用し、視覚障害者専用の視覚補助装置を開発する企業。シャシュア氏は現在も同社CTOを務めている。メガネのように見えるOrCamの視覚補助装置は、視覚障害者が文章やモノに手をかざすと、カメラやセンサーがその動きを認識し、文章を読んだり、モノが何なのか教えてくれる。
そのようにいくつかの企業を創業・運営してきたシャシュア氏の挑戦は、現在も続いている。最近では、「2021年には人間がハンドルを掴まなくとも、自動走行車が道路の上を走るようになるだろう」と断言。わずか4年後には、自動走行車の時代が開かれると予言している。
米国自動車技術協会(SAE)によると、自律走行技術の発展は大きく5つのステップに分けられている。ステップ1は、同じ速度を維持する「定速走行機能」など、ドライバーの考えや意図が運転に反映されることを支援する技術レベルである。ステップ2は、部分的な自律走行を実現する段階。危険な状況を感知して知らせる技術などが含まれ、すでに普及しているADASなどがその代表例となる。
次いでステップ3は、突発的な状況においては運転者が介入するものの、高速道路など一定区域で自律走行が可能な段階とされている。現在はこの段階まで自律走行車の技術が進んでおり、最近発売された「アウディA8」は、高速道路で時速60㎞以下で走るとき、運転者がハンドルを掴まずとも自律走行が可能となっている。同車両には、カメラで撮影した画像を分析して車線を認識したり、障害物を回避することを支援する視覚認識装置「EyeQ 3」が搭載されている。これはモービルアイの製品で、過去にはEyeQ 1(2004年発売)、EyeQ 2(2008年発売)が、ADASを実装するために使用されている。そして来年発売予定のEyeQ 4は、日産車に搭載され、時速135㎞でも自律走行が可能な、ステップ3の自律走行車を開発するために活用される計画となっている。
シャシュア教授は、2020年までにEyeQ 5を披露し、翌年にはBMWと共同で「完璧な自動走行車」を発売する考えだ。特別な状況でのみハンドルを握る必要がある高度な自律走行(ステップ4)を超えて、すべての状況で自律走行が可能な「完全自律走行(ステップ5)を目指すということである。
「コンピュータビジョン能力だけだったEyeQ 1〜3とは異なり、EyeQ 4・5は、ニューラルネットワーク技術を適用して、状況を判断する能力に備えるだろう(中略)技術的な課題は、計画通りに着実に克服しつつある」(シャシュア氏)
シャシュア氏は、4年後に完全自動走行が可能となることで、運送市場や都心環境にも大きな変化が伴うとしている。また運転する必要がなくなるため、自動車を「所有」するという感覚が「共有」に急速に傾くとも。加えて、車両共有サービスの普及により、大規模な駐車場が必要なくなることで、既存のスペースがさまざまな目的に活用されるとも指摘している。
